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お酒と水の良い関係、お茶と水の効果の違い【藤田紘一郎先生の水で健やかVOL.22】

お酒と水の良い関係、お茶と水の効果の違い【藤田紘一郎先生の水で健やかVOL.22】

健康や長寿のために水分を取りましょう、と毎回お話をしています。また、私はいろいろなところで講演をしていますが、「水」をテーマで講演をすると、決まって中年男性の中に、自分はビールやウイスキーで水分はおなかが出るほどとっている、という人がいます。

冗談半分なのでしょうが、健康や長寿にプラスになる水というとき、もちろんアルコールはこれに含まれません。「酒は百薬の長」という言い方もありますが、体内の水分を考えた場合、薬とは言いにくいのです。

飲酒中にも水分補給を

お酒

アルコールの大きな特徴の一つに利尿作用があります。寒い日にビールを飲んだりするとてきめんに尿の回数が増えて、飲んではトイレに駆け込むのが当たり前になります。あまりにトイレに行く頻度が増えるので「ただ出すために飲んでいるようなもの」と思うのは私だけでしょうか。

アルコールは飲んだ分の半分以上が尿となって排出されます。概算ですが、1ℓのアルコールを飲むと、1・2ℓの水分が体から失われることになります。飲めば飲むだけ、水分がたまりそうな気がしますが、実は飲めば飲むだけ体の水分量は減少しているのです。特にビールは利尿作用が強く、より多くの水分を失うことになります。

したがって、ビールを何杯も飲むと脱水症状を起こしかねません。立派なビール腹に、大ジョッキから何杯もビールが“注入”されているのに、体は脱水という信じられないようなことが実際に起きているのです。

お酒を飲んだ翌日、特にビールをしこたま飲んだ次の日は、顔が腫れ、くすみ、全体の色もどことなく黒ずんでいることがあります。「二日酔いの影響か」と勝手に自己診断しがちですが、これは脱水の影響で新陳代謝が悪化しているからです。

つまり、本来ならば水分が排出してくれる老廃物がたまっている状態で、それが顔にむくみとして出ているのです。こんな状態が続いているとしたら、肝臓に負担がかかってしまいます。老廃物のたまった肝臓は機能が低下をし、いずれは脂肪肝となり、さらに悪化すれば肝臓がんに至るケースもあります。

自分の適量以上のアルコールを飲み、しかも体内の水分量が少ないまま翌朝を迎えると、二日酔いを起こします。その原因となるのは、体内で分泌されるアセトアルデヒドというホルモンです。

欧米人種はこのアセトアルデヒドを分解する酵素を生まれつき持っている人が多く、そのせいでアルコールに強いと言われています。アメリカ人はお酒に強く、ウイスキーのボトルをすぐ開けてしまうイメージがありますが、その秘密には酵素があったのです。

逆に日本人にはこの酵素を持っている人が多くありません。それで日本人は欧米人ほどお酒が強くなく、少し飲みすぎると二日酔いを起こしてしまいます。

アセトアルデヒドは有害物質ですから、体内に居続けると、頭痛や吐き気、動悸(どうき)などの症状を招きます。体内に大量に蓄積されたまま眠ってしまうと、時に呼吸困難に陥ったり、意識を失ってしまったりすることもあります。

飲酒はこのように、時に重大な症状を起こしかねませんから、水分補給が重要になってきます。水には解毒作用があり、アセトアルデヒドも排出してくれます。

その飲み方ですが、私は「乾杯の前の一杯」を提案したいと思います。と言っても、もちろん飲むのはコップ一杯の水です。アルコールが体内に入る前に、水を取りあえず補給しておけば脱水症状はある程度防げます。

飲酒中の水の摂取もおすすめです。「そんなやぼな!」と思う人がいるかもしれませんが、例えばウイスキーはアルコール度数が高いためにストレートで飲むときは、横に水のグラスを置く習慣がアメリカにもあります。

その証拠にジャズの有名なスタンダードナンバー『ストレート・ノー・チェイサー』(今日はストレートで水はいらない)という曲があります。バーテンダーにわざわざ「水はいらない」と断るほど、いつも水がついてくる習慣がわかります。

お酒の強いアメリカ人でも水を飲みながら飲酒をするのですから、日本人の私たちも、水と一緒にお酒を飲む機会を増やすべきです。また、「〆の一杯」の水もお忘れなく。解毒作用によって二日酔いの防止にもなるからです。

お茶と水の違い

お茶と水

飲酒前と飲酒後は、体に吸収されやすい軟水のミネラルウォーターがおすすめです。飲酒中は、飲むお酒のタイプによって水を決めるのも楽しいものです。

最近では、若い人が日本酒と一緒に水を飲んでいる光景を目にしますが、水を飲むことによって、日本酒の味がさらに引き立つ、という効果もあります。辛口の日本酒の時には硬水を飲むのが良いでしょう。

反対に甘口のお酒を飲むときには軟水を飲むと、それぞれおいしさが増して感じられます。お酒も水もおいしくなり、さらに体に負担をかけないように良い条件の飲酒ができるのですから、「水の効果は計り知れず」ではないでしょうか。

水の講演をしていて、よく質問を受けることがもう一つあります。それは「お茶をよく飲むので、水の代わりになりますか。」という質問です。私が1日に1・5ℓ~2ℓの生の水つまり、ミネラルウォーターを飲むということは、その中にお茶もコーヒーも入っておりません。

お茶には多くの良い点があります。特にたっぷり含まれているカテキンには抗酸化作用があり、健康や美容にメリットの多い飲料です。しかし、お茶と生の水とは「似て非なる」ものであり、水を煮沸することによって水が本来もっている良い点を失っています。

さらに、お茶にあるタンニンやカフェインは飲みすぎると、胃腸の状態を悪化させるという説もあり、お茶は水ほど「完璧に良い飲み物」ではありません。

また、気になるのがペットボトルに入ったお茶です。ボトルの賞味期限を見ればわかりますが、ペットボトルのお茶はずいぶん長持ちをします。密閉しているために腐らないのでしょうが、酸化を防止するビタミンCなどの添加剤が混入されている商品もあります。

もちろん体には無害ですが、入れたての自然の茶葉を使ったお茶の方が体にいいことは間違いありません。そういったことから、水とお茶は区別して、飲まれると良いと思います。

藤田先生のウォーターレシピ

【水】お酒を飲む前、飲んでいる時、飲み終わった時:ミネラルウォーター(その時々で軟水か硬水)

【飲み方】お酒の前後コップ一杯。飲み中少しずつ。

藤田 紘一郎

東京医科歯科大学名誉教授

著者紹介

藤田紘一郎

藤田紘一郎 (ふじたこういちろう)1939年、旧満州生まれ、東京医科歯科大学卒。東京大学医学部系大学院修了、医学博士。
金沢医科大学教授、長崎大学教授、東京医科歯科大学教授を経て、現在、東京医科歯科大学名誉教授。専門は寄生虫学、熱帯医学、感染免疫学。

1983年、寄生虫体内のアレルゲン発見で、小泉賞を授与。
2000年、ヒトATLウイルス伝染経路などの研究で日本文化振興会・社会文化功労賞、国際文化栄誉章を受賞。

主な近著に、『50歳からは炭水化物をやめなさい』(大和書房)『脳はバカ、腸はかしこい』(35館)、
『腸をダメにする習慣、鍛える習慣』『人の命は腸が9割』(ワニブックス【PLUS】新書)などがある。

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本記事に記載されている情報は、他の専門家によるアドバイスとは異なる可能性があります。特定の健康上の懸念がある場合は、個別事象の専門家に直接ご相談ください。

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