水を飲んではいけない時がある「熱中症」にはスポーツドリンク【藤田紘一郎先生の水と美容VOL.3】

【水と美容vol.3】水を飲んではいけない時がある「熱中症」にはスポーツドリンク

 水を飲んではいけない時があります。それは熱中症や脱水症状になってしまったときです。私もかつて、ひどい熱中症を経験したことがありました。それは、湾岸戦争の十数年前のことでした。

私たちは、イラクからクゥエートに向かい、砂漠を車で走っていました。焼け付くような日差しのもと、車外の気温は50度近くになっていました。それでも、砂漠の黄金の景色は美しく、魅了され私は黄金の世界へと車を飛び出したのです。

ところが、20分も歩くと急に頭痛と吐き気に襲われました。気温50度の世界では、体温の熱を放散させる間もなく、汗が瞬間に乾燥してしまうのです。汗はどんどん出るのにすぐに乾燥するので、体温は全く下がらず、気が付いた時には脱水症状を起こしてしまい、熱中症になってしまいました。

私は慌てて車に戻って、冷たいミネラルウオーターを飲もうとしました。しかし、のどは渇いているのに、水を少し飲むと、あとは水を体が受け付けなくなりました。

 

脱水症状の時の真水は命の危険性を高める

脱水症状になると真水は命の危険性を高める

アドルフ博士が砂漠で行った有名な実験があります。

数人の被験者に、脱水症状が出るまで歩いてもらい、その後、真水を飲んでもらいました。被験者はある程度まで水を飲んだのですが、私と同じように途中から飲めなくなってしまったのです。つまり、真水では脱水症状の回復がうまくできないことが分かったのです。なぜでしょうか。

その理由を森本武利教授(当時・京都府立医科大学)らがネズミを使った実験で明らかにしたのです。まずネズミを体重の7%の割合で脱水症状にさせました。その後ネズミに真水をあたえたのですが、途中で飲むのをやめてしまい、脱水症状からの回復率は50%にしかならなかったのです。ところが、同じネズミに血液と同じ濃度の電解質を含む水を与えると、脱水症状の回復率は100%になったのです。

熱中症になった体は細胞が水分を失い、細胞の内液は塩水を煮詰めたような状態になっています。そこに塩分を含まない真水が入ってくると、細胞の内外は浸透圧の差が大きくなり、細胞の機能が狂ってしまいます。そこで浸透圧が一定のラインに達すると、脳がもう水を飲むなと指令を出すのです。

しかし、水分を補給しなければ血液の濃度はどんどん上がり、ドロドロになっていきます。すると、これ以上の水分喪失を避けるため、今度は体が汗を出さなくなります。汗を出さなければ、体温はさらに上昇します。つまり、脱水症状の時の真水は、命の危険性を高めるだけなのです。

 

脱水症状のすばやい回復には食塩水かスポーツ飲料を

脱水症状のすばやい回復には食塩水かスポーツ飲料を

日本ではこの時期、熱中症になる人が急増化します。熱中症は、一般的には蒸し暑い中で激しい労働や運動をした影響で、体温調節機能がまひすることで発症します。しかし、実際には圧倒的に高齢者の発症が多く、しかも室内で倒れるケースが多いのです。高齢になると、暑さに対する調節がうまく働かないためです。

脱水状態になって、体内の水分と塩分のバランスが崩れると汗が出にくくなり、体温が急に上昇して、熱けいれんやめまい、頭痛、吐き気などの症状が起こります。さらにひどくなって脳内の体温調節機能がおかしくなると「熱射病」になります。暑さによって発生する、こうした障害の総称が熱中症なのです。

熱中症になった時、真水を飲んでも脱水症状は改善されません。真水を飲むと体内の塩分濃度が薄まり、かえって細胞内液の脱水が進んでしまうからです。脱水症状で真水をいくら飲んでも、脱水率は50%程度にしか改善されないのです。

脱水症状をすばやく完全に回復させるためには、0・1~0・2%の食塩水か、ナトリウム濃度が100mlあたり40~80㎎のスポーツ飲料を飲まなければならないのです。

最近の熱中症になる人の増加は、ヒートアイランド現象に代表される気象条件の変化に加えて、暑さに対する現代人の順応性低下も、熱中症を増加させている原因とされています。

 

普段から自分に合った水で水分補給を心がけることが大切

普段から自分に合った水で水分補給を心がけることが大切

熱中症は誰にでも起こりうる病気です。普段から脱水症状が起こらないように気を付けることが大事です。熱中症の症状は3段階に分けられます。

熱中症のⅠ度(軽度)は足がこむら返りを起こしたり、立ちくらみを起こしたりする状態。このときの対処法は水分の摂取で間に合いますので、我慢をせずに早めに水分を補給しましょう。

Ⅱ度(中等度)めまいが起き、下痢や嘔吐(おうと)を起こし、体温が上昇して、疲労を感じるほどになると、点滴輸液の対処法が必要になります。

Ⅲ度(重度)深部体温が39度以上になり、意識障害を起こし、肝腎障害、ふるえの症状、血液凝固障害。ここまでになると、専門病院への搬送が必要で救急車到着までは身体冷却が必要です。

しかし、普段から、自分に合った水を持ち歩き、こまめに水分補給をして、熱中症などの症状を起こさぬように心がけるのが大切です。また、暑い時期に運動をする場合は必ず休息を取り、体の冷却に心がけ、正しい水分補給の知識を持つことが一番大切なことです。

水を大切に思うならば水が人にとって命の水の存在でなくなるようなことを起こしてはいけません。

 

藤田先生のウォーターレシピ

ウォーターレシピ02【水】
脱水症状を回復させるため:1~0・2%の食塩水か、ナトリウム濃度が100mlあたり40~80㎎のスポーツ飲料
【飲み方】
脱水症状をすばやく回復させたい時に飲む。

 

著者紹介

藤田紘一郎

藤田 紘一郎(ふじた こういちろう)
1965年 東京医科歯科大学医学部卒業
1966年 第40回医師国家試験合格(代190399号)
1970年 東京大学大学院医学系研究科修了(医学博士 東京大学)
1970年 東京大学医学部助手(寄生虫学)
1972年 順天堂大学医学部助教授(衛生学)
1987年 東京医科歯科大学医学部教授(医動物学)
1995年 講談社出版文化省・科学出版賞
2000年 東京医科歯科大学院教授(国際環境寄生虫病学)
2000年 日本文化振興会・社会文化功労章および国際文化栄誉賞
2005年 東京医科歯科大学名誉教授、人間総合科学大学教授(免疫・アレルギー学) 
2015年 東京医科歯科大学名誉教授 現在に至る

 

主な近著に、水の健康学(新潮新書)、万病を防ぐ「水」の飲み方選び方(講談社+α文庫)、水と体の健康学(ソフトバンククリエイティブ・サイエンスアイ新書)、ボケる、ボケないは「腸」と「水」で決まる(朝日新書)、「体をつくる水、壊す水」(ワニブックスPLUS新書)、など他多数。

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