熱中症対策のスポーツドリンクが急性の糖尿病を発症させる【藤田紘一郎先生の水で健やかVOL.14】

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蒸し暑い日が続いており、熱中症になる人が増えてきました。熱中症になった時、普通の水を飲んでも熱中症の症状は改善しません。体液の浸透圧と同じ、スポーツドリンクを飲まないといけないのです。しかし、スポーツドリンクを飲み続けると糖尿病を発症させる危険があることも知ってほしいと思います。

スポーツドリンクの過剰摂取による弊害

私もかつて2度も重度の糖尿病を患ったことがあります。最初の発病は、十数年ほど前でした。私は毎夏インドネシアへ行き、現地にて医療調査を行っています。この時は長期にわたって調査活動をしていました。
大好きなインドネシアでの活動はやりがいが大きいものの、暑い中での調査のため、体力の消耗が気にかかりました。私は人一倍、汗をよくかきます。脱水症状を防がなければならないと、スポーツドリンクを意識的に飲み続けていました。すると、急激に痩せてきてしまったのです。体重を測ると、5㎏も減っていました。

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体重の変化とともに気になったのは、スポーツドリンクをいくら飲んでものどの渇きが癒やされないことでした。尿はやけに泡立っていました。なめてみると甘く感じました。
血糖値を計ると、空腹時で500㎎/㎗もありました。糖尿病と診断される基準は、空腹時で126㎎/㎗以上です。この数値をはるかに上回っていたのです。

帰国後、私は糖尿病の専門医による食事療法を受けました。日本糖尿病学会が進める食事療法は、いわば「高糖質カロリー制限食」です。摂取エネルギーの総量は抑えつつも、エネルギーの約6割を主食などの糖質からとるというものです。この食事療法では、私の血糖値が改善せず、インスリン療法を受けるほかはありませんでした。
その後、血糖値はやや高めの状態を保ちながらも、問題なく生活をしていました。ところが、2010年の夏に再発したのです。季節は前回と同じく真夏の暑い盛りでした。今にして思えば、私の糖尿病は、スポーツドリンクや主食など糖質の含有量の多いものの取り過ぎと、夏場の疲れによって、膵臓(すいぞう)のβ細胞が疲弊して起こっていたのでしょう。

私は糖尿病を克服するためいろいろな論文を読みあさりました。たどり着いたのが、糖質制限食と水飲み健康法です。両方を同時に実践したことにより、私の血糖値は正常値まで瞬く間に下がり、体重も健康的に10㎏減量できました。現在も良好の状態を保っています。

間違った水分補給は糖尿病の原因に

近年、夏になると熱中症で倒れる人が多くなっています。厚生労働省の発表によれば、2010年の熱中症による死亡者数は過去最大で、1731人に上りました。熱中症への心配が社会的に高まるにつれてしつこいように注意喚起されるのが、水分補給です。
熱中症予防のための水分補給は、スポーツドリンクや経口補水液などが原則のように言われています。本当にそうなのでしょうか。

スポーツドリンクには大量の糖分が含まれています。その量とは500㎎のペットボトル1本あたり20~30g。スティックシュガーに換算すれば約7~10本分にもなるのです。暑い盛りには、1本分のスポーツドリンクをのどに流し込むことなど簡単です。「熱中症予防だから」と毎日数本も飲んでしまうと、どうなるでしょうか。砂糖の摂取量は、1日あたり20gが適量と言われています。明らかに糖質オーバーの状態になるのです。私が最初になった急性の糖尿病は、別名では「ペットボトル症候群」と呼ばれるものです。

ペットボトル入りのジュースを飲み過ぎれば、誰でも簡単に糖尿病になってしまいます。これは子どもも同じです。子どものうちからスポーツドリンクを日々大量に飲んでいると、膵臓(すいぞう)のβ細胞が疲弊し、ある日突然、糖尿病を発症しかねないのです。

人工甘味料の糖質

「私はカロリーオフのものを選んで飲んでいるから大丈夫」という人もいるかもしれません。しかし、これも危険性をはらんでいます。カロリーオフの飲料なのに満足感の高い甘みを感じられるのは、人工甘味料が使われているからです。私が危険視している人工甘味料の一つは、フルクトースコーンシロップです。砂糖の6倍もの甘さがあり、製造が簡単なことから、清涼飲料水だけでなくお菓子や焼き肉のタレなどにも多用されています。この人工甘味料は、体内のAGE化をブドウ糖の10倍もの速さで進めることがわかっています。AGEとはたんぱく質と糖との化合物であり、たんぱく質に糖分をまぶしてべとべとになった状態の物質です。AGEは、排出されにくいため、体内でいったん生成されると蓄積されてしまい、さまざまな病気を起こす原因になることがわかっています。糖尿病の診断の際、ヘモグロビンA1cという数値を血液検査によって調べます。ヘモグロビンA1cとは、ヘモグロビンというたんぱく質にブドウ糖がくっついてできる成分で、AGE化する前段階です。糖尿病になると血液中に糖があふれている状態になり、この値が上昇するのです。

フルクトースコーンシロップは、ペットボトルのラベルには果糖ブドウ糖液糖や高果糖液糖などと記載されています。購入の際にはチェックするようにしてください。
また、スクラロースやアセスルファムK(カリウム)などもカロリーオフの飲料によく使われている人工甘味料です。これらは肝臓や腎臓への障害、細胞の遺伝子への影響、免疫機能の低下や誤作動を起こす心配があるともみられています。

ただし、スポーツドリンクを飲まなければいけないときもあります。脱水症状が起こってしまった場合です。この時には速やかにスポーツドリンクを飲まなければいけません。汗をかくと水分と一緒に体内の塩分も失うからです。脱水症状時に真水を飲むと体内の塩分濃度が薄まり、かえって脱水が進みます。炎天下で激しい運動を行う人も脱水症状になりやすい状態にあるため、スポーツドリンクをこまめに飲むと良いでしょう。

しかし、通常の生活の中で熱中症予防として水分を補給するならば、水と塩で十分です。私は、糖尿病を克服して以来、真夏のインドネシアに出掛けても、スポーツドリンクは飲まないようにしています。水分補給のポイントはアルカリ性の水をのどが渇く前にチビリチビリとこまめに飲み、天然の粗塩をちょっとだけなめたり、岩塩を1粒口に入れたりします。梅干しもよく食べます。思い返せば、スポーツドリンクが販売されたのは、わずか数十年前のことです。それ以前は水と塩で熱中症を防いでいたのです。

藤田先生のウォーターレシピ

【水】熱中症対策:アルカリ性の水と少量の塩。

【飲み方】のどが渇く前にこまめにチビリチビリ飲む。

 

藤田 紘一郎

東京医科歯科大学名誉教授

 

著者紹介

藤田紘一郎

藤田紘一郎 (ふじたこういちろう)1939年、旧満州生まれ、東京医科歯科大学卒。東京大学医学部系大学院修了、医学博士。
金沢医科大学教授、長崎大学教授、東京医科歯科大学教授を経て、現在、東京医科歯科大学名誉教授。専門は寄生虫学、熱帯医学、感染免疫学。

1983年、寄生虫体内のアレルゲン発見で、小泉賞を授与される。
2000年、ヒトATLウイルス伝染経路などの研究で日本文化振興会・社会文化功労賞、国際文化栄誉章を受賞。

主な近著に、『50歳からは炭水化物をやめなさい』(大和書房)『脳はバカ、腸はかしこい』(35館)、
『腸をダメにする習慣、鍛える習慣』『人の命は腸が9割』(ワニブックス【PLUS】新書)などがある。

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