食べ物が栄養になる水選び・軟水と硬水の使い分け【藤田紘一郎先生の水で健やかVOL.23】

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健康で長生きをするために、生水の飲用をおすすめしていますが、ミネラルウォーターは飲むだけではなく、料理にもさまざまなメリットを発揮します。
日本茶やコーヒーにミネラルウォーターを使うと、安いお茶の葉やコーヒーも美味しくなると言われていますが、料理も水を使い分けることで一段と美味しくなります。食事を楽しみながらストレス解消をはかっていただきたいものです。

日本食には軟水

まず料理には、硬水と軟水の使い分けをおすすめします。欧州の水の多くはカルシウムマグネシウムを多く含む硬水で、日本の水はこれらの含有量が少ない軟水が多いです。それぞれの特徴を生かすと、料理は格段に美味しくなります。
よく、「酒は水で決まる」と言われますが、確かに水の良い地域には銘酒が数多く誕生しています。

たとえば、「灘の生一本」で知られる灘の酒は、辛口の銘酒として知られていますが、これは日本にめずらしいカルシウムを多く含む神戸・六甲山湧水からつくられているからです。硬水で作られた酒は、酵母菌の働きが抑えられキリリとした辛めで、ツウの間では「男酒」と呼ばれます。
しかし、同じ関西地方でも京都の伏見の軟水を使った酒は甘口です。こちらは酵母菌の熟成が進み、やや甘めの「女酒」が生まれます。水が変わっただけで酒の味が大きく変わってしまうのは、水のパワーのなせる技なのでしょう。

次に料理、特に日本食を美味しくする軟水の使い方についてお話ししましょう。
地形がなだらかで、雨の多い日本には軟水が多く、それは食にも色濃く反映されています。つまり、「おふくろの味」や和食には、伝統的に軟水を利用することが多く、軟水の“まろみ”によって味が引き立つのです。
日本食の中心はやはり御飯ですが、お米は乾燥した状態から水につけた状態の時にもっとも水分を吸収します。したがって、少々贅沢ではありますが、お米を研ぐときは軟水のミネラルウォーターを使うと、ふっくらと甘みのある御飯が炊けます。

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反対に硬水で炊いてしまうと、カルシウムがコメの植物繊維を硬くし、ふっくらと炊きあがりません。
もし、ミネラルウォーターを御飯の研ぎ水として使うことに抵抗があるようでしたら、家族の誕生日など特別な日に試してみてはいかがでしょうか。味の違いに驚くはずです。
だしの味も軟水を使うことでよりいっそう引き立ちます。ミネラルの多い硬水では、鰹節やコンブのうま味成分がとけにくく、さらにカルシウムやマグネシウムがうま味成分と結合することで、灰汁が出やすくなってしまいます。その点、軟水はうま味成分がほどよく抽出され、味全体に丸みのあるおいしさが出ます。かつおだしを強めにしたいときはミネラル分を多めに、昆布だしを強くしたいときはミネラルの少ない水を選ぶと、よりいっそううま味が楽しめるはずです。

古くからある井戸を調べると、関東以東にある井戸水は比較的、硬度が高く、以西の水は硬度が低くなります。
関東がわりと鰹だしを好み、関西は昆布だしが多いのは、水の性質の違いが影響されていると考えられます。食文化にまで関係している水の奥深さを感じますが、このような水の性質を最大限に生かして料理をすれば、ひと味違う食卓になり、リラックス効果も期待できるのです。

肉料理には硬水、野菜料理には軟水

次に、単純に肉料理には硬水、野菜料理には軟水が相性が良いというお話をしたいと思います。
和食とは反対に、硬水との相性がいいのが洋食です。パスタやピザをはじめ、洋風の味付けにする料理には全般的に硬水が合います。チャーハンやパエリアといったコメ料理の場合も、硬度が120㎎位の中硬水を使うと、お米がパラパラになり、よりいっそう本格的な味が楽しめます。

シチューなどの肉料理にも硬水がマッチしますが、難しいのは和と洋の中間に位置する料理です。たとえば、しゃぶしゃぶなどがその代表になりますが、かつてテレビに出演したとき、こんな「実験」をしたことがあります。
それはみのもんたさんの番組でのことですが、しゃぶしゃぶを軟水と硬水で作り、出演者の皆さんに食べ比べをしてもらったのです。すると、全員が揃って硬水のほうがおいしいと答えたのです。
料理は、和風の味付けをする場合でも、肉料理の場合は硬水のほうが相性がいいようです。肉を加熱すると硬くなる成分が出てしまいますが、硬水に多いカルシウムがその成分とくっつき、灰汁として排出されます。それで肉が軟らかくなり、いっそう肉のうま味が際立つと考えられます。ビーフシチューなどでブロック状の牛肉をじっくり煮込むときなどは、硬度300㎎/ℓ程度の「硬水」を使うのがおすすめです。

私はしゃぶしゃぶを家で作るときは「マグナ1800」という超硬水を使っています。肉は本当に軟らかくなり、スープに溶け出した肉汁のうま味は超硬水のカルシウムと相まってうま味はまさに絶品です。
野菜を煮たり、スープを作るときは、軟水を使った方が味はよくしみ込み、野菜も軟らかくなります。ただし、根菜をじっくり煮込む場合は灰汁を防止するために、硬水を使うという選択肢もあります。
このあたりは硬水、軟水を使い分けて、味を比べて自分なりの「料理水」を見つけてみてはいかがでしょうか。

最後にコーヒーを入れる時の水選びをご紹介しましょう。水はお茶やコーヒーなどに絶妙なひと味をプラスします。コーヒーに合うのは中硬水から硬水というのが一般的ですが、使い分けは、酸味の強い味を好む人は、コーヒー豆の焙煎を軽くするそうですが、そういう人には中硬水がおすすめです。逆に苦みを強くしたい場合は、マグネシウムの多い硬水を使うと、よりいっそう苦みや渋みが強くなります。水の性質を上手く利用してコーヒーをひと味違った楽しみ方で是非、お試しください。

 

藤田 紘一郎

東京医科歯科大学名誉教授

 

著者紹介

藤田紘一郎

藤田紘一郎 (ふじたこういちろう)1939年、旧満州生まれ、東京医科歯科大学卒。東京大学医学部系大学院修了、医学博士。
金沢医科大学教授、長崎大学教授、東京医科歯科大学教授を経て、現在、東京医科歯科大学名誉教授。専門は寄生虫学、熱帯医学、感染免疫学。

1983年、寄生虫体内のアレルゲン発見で、小泉賞を受賞。
2000年、ヒトATLウィルス伝染経路などの研究で日本文化振興会・社会文化功労賞、国際文化栄誉賞を受賞。

主な近著に、『50歳からは炭水化物をやめなさい』(大和書房)『脳はバカ、腸はかしこい』(35館)、
『腸をダメにする習慣、鍛える習慣』『人の命は腸が9割』(ワニブックス【PLUS】新書)などがある。

 

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